鹿が遊びに来る離れで、文豪が愛した風情と料理を堪能

選りすぐり宿

鹿が遊びに来る離れで、
文豪が愛した風情と料理を堪能

春日大社の一の鳥居脇、緩やかな丘の上に点在する数寄屋風の離れと離れの間を、鹿がのんびりと歩いていきます。ここ「江戸三」は、奈良ならではの情緒に浸れる料理旅館です。

    EDOSAN 江戸三

    建物の近くで鹿がのんびりと過ごしています

    江戸三は明治40年(1907)、料亭として開業。料理旅館となったのは戦後ですが、創業当時から、画家の小出楢重や作家の志賀直哉、文芸評論家の小林秀雄ら、多くの文人・墨客が訪れ、定宿にしていました。
    客室すべてが離れで、料理と景色を楽しみながら気兼ねなく寛げるところが愛されたのでしょう。最近では、日本らしい情緒を求める欧米の観光客にも人気です。

    食事だけの利用もでき、宿泊できるのは全8室中5室。2人から6人までと、家族や友人と過ごすのにちょうどいいサイズです。
    2人用客室「太鼓」は、網代天井になった茶室風の造り。座って丸窓に目をやると、道が視界から切り取られ、緑の丘に鹿が遊ぶ一幅の絵を見るようです。

    茶室風の落ち着いた趣が魅力の「太鼓」の間。ナンテンの床柱など、随所にこだわりがうかがえます

    客室名に「太鼓」や「銅鑼(どら)」など楽器名が付いていますが、これは電話がなかった創業当時、鳴り物を鳴らして客室係を呼んだことにちなんだもの。各部屋には今も、当時の鳴り物が吊るされています。

    夕食は通常、会席料理ですが、10~3月には名物「若草鍋」を選ぶことができます。志賀直哉が店主に頼んで作らせたのが始まりで、伊勢エビや鯛、ハマグリなどの魚介と鶏肉、野菜、湯葉など16種類もの具材を使った豪華なお鍋。昔ながらの炭火炊きで提供されます。

    鍋の具材が山型に盛られ、頂きには伊勢エビが。鍋には「若草鍋」の文字。特別にあつらえた有田焼のかんてき(七輪)で炊いていきます(写真は3人前)

    ふたを開けると、一面を覆うホウレン草の緑の鮮やかなこと!志賀直哉が、新緑の若草山になぞらえて名付けたというのも納得です。

    カツオと昆布のダシに、魚介や鶏肉などの旨みが染み出し、野菜にギュッと染み込んでいます

    そのおいしさは折り紙付きで、デザイナーの三宅一生氏が、「(昭和)天皇も賞味された日本版ブイヤベース」とフランスのファッション誌に紹介したほど。

    若草鍋は、食事のみの利用もできます。付き出しと八寸が付き1人8,640円。造りをプラスした10,800円のコースもあります(2名より)

    炭のはぜる音と、長く尾を引く鹿の声を聞きながら語り明かす。このうえなく奈良を感じられる一夜が、ここにあります。

    江戸三(えどさん)

    住所
    奈良市高畑町1167
    電話
    0742-26-2662
    チェックイン
    15:00 / チェックアウト10:00
    料金
    1泊2食付き19,440円~
    web
    http://www.edosan.jp/

    ※価格は全て税込みです
    ※最新情報は各所へお問い合わせください

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