奈良 而今 なら にこん
きたまちの通りに面したお店は、美しく整えられた前栽からも心づくしが感じられ、お料理にも期待が高まります。
清潔感あふれる店内は、茶室を思わせる水屋や網代天井など、数寄屋風のしつらえ。
カウンター越しに見える広い厨房には、陶器のご飯釜をのせた“おくどさん”(=かまど)、炭焼き用のコンロが並びます。
おだしのやわらかい香りが漂う中、一品一品、丁寧に仕上げていくご主人の手元にも見入ってしまいます。
ご主人の清水唱二郎さんは奈良の出身。奈良の老舗料亭「菊水楼」、京都の懐石料理店「祇園にしかわ」で修業を積み、2016年、店を構えました。
店名の「而今(にこん)」は「今この瞬間を大事にする」という意味の禅の言葉です。「ポジティブな屋号にしたかったんです」と、笑顔で答えてくださる清水さん。
新星のように現れた本格懐石の店は、口コミで人気が広がり、お昼は何か月も先まで予約で埋まっているほどです。
お料理は、月替わりのおまかせコースです。夜のコースは12,960円。
明石から直送される魚をはじめ、旬の食材の旨味を引き出す日本料理の技にうっとり。
さらに、一ひねりした趣向もプラスされています。
たとえば、かぶら蒸しといえば、ふわふわの卵白と蕪(かぶら)で白身魚を包みますが、「甘鯛はウロコがおいしいので」と、パリパリの松笠焼きにして外に出してしまいます。清水さんの言う「変化球」です。
まろやかな泡雪に包まれた蕪の風味、松笠焼きの香ばしさ。それらを邪魔しないように、ワサビは点盛りではなく餡にしてあります。
鴨が定番の治部煮も、奈良県産の大和榛原牛を使います。
田楽味噌で柔らかく炊いた牛肉と大根とを合わせることで、口の中でふろふき大根の味に。
大根も、煮崩れしにくい品種の「あじまるみ大根」を選んでいます。
ご飯は、おくどさんの釜で香ばしく炊き上げます。お酒は奈良の地酒はもちろん、各地から取り寄せたおすすめのもの。
「これまで、うまみの強いお酒には料理が負けると思っていましたが、そんなことはないなと、この頃思うようになりました」と清水さん。
厨房にみなぎる緊張感、お料理を口にしたときの心和む瞬間、それにカウンター越しの何気ない会話。この緩急の間合いもまた、心地よいものです。
コースの締めは、店主自ら点ててくれるお抹茶で。最後まで心づくしで満たされます。
奈良で過ごす夜が楽しみになる、とっておきのお店です。
奈良 而今(なら にこん)
- 住所
- 奈良市鍋屋町3
- 電話
- 0742-31-4276
- 営業時間
- 昼(金・土・日曜のみ営業)12:00~15:00(最終入店13:00)、夜18:00~22:30(最終入店20:30)
- 定休日
- 日・月曜、祝日、各月の最終日 ※年末年始の休みは12月26日~31日
- web
- http://naranikon.com/
※価格は全て税込みです
※最新情報は各所へお問い合わせください