奈良団扇ゆかりの古社へ。
カラフル漆器でカフェタイム
春日大社国宝殿/春日大社カフェ・ショップ鹿音(かすがたいしゃこくほうでん/かすがたいしゃカフェショップかおん)
奈良団扇(ならうちわ)は、春日大社の神官が手内職として作った団扇がその起源ともいわれています。そのため、透かし彫りのデザインに藤の花や灯籠、中門など、春日大社の題材を使うことも多いんです。2016年には「春日若宮おん祭」の舞楽に使われる鼉太鼓(だだいこ)をデザインした団扇も制作しました。鼉太鼓は国宝殿に展示されていて、その迫力と華やかさを間近に感じることができます。また併設されているカフェ「鹿音」もおすすめ。器には、若手工芸家仲間である漆芸作家、阪本修さんの作品が使われています。従来の漆器のイメージとはひと味違う、カラフルで優しい印象の漆器でゆっくりカフェタイムを楽しんでください。
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国宝殿にて鼉太鼓をモチーフにした奈良団扇を手にする池田さん。この鼉太鼓は、高さ6.5mもある国内最大級の太鼓で、源頼朝の寄進と伝わる重要文化財の複製です。毎年「春日若宮おん祭」で実際に使用されています
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国宝殿に併設された「春日大社カフェ・ショップ鹿音」。2階の展示室では、国宝や重要文化財に指定された美術工芸品などを鑑賞することができます
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ナギの樹が配された明るい店内。樹齢800年を超える巨大な春日杉の切り株は、スタンディングテーブルにも。おみやげ用のお菓子も販売しています
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阪本修さんのあたたかい色味の漆器で提供されるコーヒーセット700円。セットのお菓子は、奈良のフランス菓子店「La Pause(ラ・ポーズ)」のシェフが考案した「奈良詣」。バターを使用した洋風生地で粒餡を包んだ和洋菓子です
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漆器は奈良の伝統工芸品。カラフルな作品を手に取り、感触を確かめる池田さん
詳細情報
- 春日大社国宝殿/春日大社カフェ・ショップ鹿音(かすがたいしゃこくほうでん/かすがたいしゃカフェショップかおん)
- 住所
- 奈良市春日野町160
- 電話
- 0742-22-7788(春日大社)、0742-22-6600(カフェ・ショップ鹿音)
- 開館/営業時間
- 国宝殿10:00~17:00(入館は16:30まで)、鹿音10:00~17:00(カフェはLO16:30)
- 休館日
- 不定休 ※国宝殿展示入替日は休館
- 入館料
- 国宝殿700円
- アクセス
- 近鉄奈良駅からバス約10分「春日大社本殿」下車すぐ
- WEB
- https://www.kasugataisha.or.jp/museum/
奈良時代の染色技法
「ロウケツ染め」を体験
rooftopならまち染工房(ルーフトップならまちそめこうぼう)
ロウケツ染め作家の中井由希子さんも、若手工芸家仲間の一人。ならまちに工房を持ち、洋服や小物の制作、デザイナーに提案するための生地の染色などをされています。ロウケツ染めは蝋(ろう)を使った染色方法で、奈良時代の三大染色技法の一つといわれています。正倉院には日本で一番古いロウケツ染めの作品が残っているんですよ。中井さんの作品は何回も繰り返し染めてあり、奥行きのある色合いが魅力的です。工房ではロウケツ染め体験のワークショップも行っているので、私も挑戦してみました。工程を一つひとつ教えてもらいながら好きな図柄を描いていると、夢中になってしまいますよ。
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中井さんの丁寧な指導のもと、ロウケツ染めを体験。ハンカチ用の布に図案を描いたら、伸子(しんし)に布を張り、白地を残したい部分に溶かしたロウを塗っていきます
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刷毛で色を塗るときはこんな具合に…と、実演を交えながら教えてもらいます
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池田さんは星屑のようにロウを散らして小宇宙のような世界感に。ロウケツ染め体験3,500円~(所要時間約2時間、要予約)
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ギャラリースペースには、シンプルなデザインのドレスやテキスタイルパネルなど、絵画のような色彩の模様が美しい作品の数々を展示。スカーフ27,000円~
詳細情報
- rooftopならまち染工房(ルーフトップならまちそめこうぼう)
- 住所
- 奈良市東城戸町35 柴田ビル3F
- 電話
- 0742-55-2250
- 営業時間
- 10:00~17:00
- 定休日
- 水・木曜 ※展示会等のイベントに合わせ変更あり
- アクセス
- 近鉄奈良駅から徒歩約5分
- WEB
- https://www.rooftop-nara.net/
奈良の伝統工芸品が
一堂に集まる展示館
なら工藝館(ならこうげいかん)
奈良には、奈良漆器、一刀彫、赤膚焼(あかはだやき)、墨、筆、奈良晒(ならさらし)など、長い歴史の中で培われてきた素晴らしい伝統工芸がたくさんあります。ならまちの「なら工藝館」に行くと、奈良の伝統工芸の中でも特に秀でた作品が展示されているので、ぜひ立ち寄ってみてください。また、実演イベントでは、私も含めた現役の作家が作品を制作する様子を間近に見ることができるので、伝統工芸の魅力を肌で感じていただけると思います。
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常設展示室では、年間を通して奈良の伝統工芸品を一堂に鑑賞することができます
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「奈良筆」は国指定の伝統工芸品。筆づくりは墨の産地であり寺院の多い奈良で発達し、現在も高級品を中心に生産されています
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販売コーナーでは伝統工芸品を買って帰ることも
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奈良固有の焼き物としてファンも多い「赤膚焼」のカップ。やわらかな風合いと奈良の風物を色鮮やかに描いた「奈良絵」の組み合わせが特徴的です
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ならまちにあるので気軽に立ち寄れます
詳細情報
- なら工藝館(ならこうげいかん)
- 住所
- 奈良市阿字万字町1-1
- 電話
- 0742-27-0033
- 営業時間
- 10:00~18:00(入館は17:30まで)
- 定休日
- 月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日(その日が土・日曜、祝日にあたるときを除く)、展示替え期間
- アクセス
- 近鉄奈良駅から徒歩約7分
- WEB
- https://azemame.web.fc2.com/
器にも注目、東大寺戒壇堂近くにたたずむ隠れ家的蕎麦屋 そば処 喜多原(そばどころ きたはら)
蕎麦好きの私がよく行くのが「喜多原」さん。東大寺や日本庭園の依水園に近く、観光の途中に立ち寄るのにもぴったりなので、県外の友達が奈良に来たときによく案内しています。「外一(そといち)」と呼ばれる十割に近い蕎麦で、店主が毎朝石臼で挽いています。なかでもいつも注文するのは、天ぷら付きの蕎麦。天ぷらの野菜は日によって違いますが、ダシで炊いた大根、蒸した鳴門金時など、ひと手間かけた野菜の天ぷらや海老が付く、盛りだくさんな内容です。使っている器はすべて信楽焼だそうで、どれもセンスがよく、器を見るのも楽しみの一つになっています。
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「奈良野菜と海老の天ぷらそば」1,480円。あたたかい蕎麦のつゆは、最後まで全部飲み干せるやさしい味です。柚子と三つ葉が香りのアクセントに。別盛りの天ぷらは、塩でいただきます
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どっしりとした信楽の皿も魅力的な「ざるそば」870円。まず塩で蕎麦の風味を味わってから、旨みの深いダシを使った蕎麦つゆで。最後に出される蕎麦湯もおいしく楽しめます
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店内に入るとゆったりとした雰囲気
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「冷たい蕎麦もあたたかい蕎麦もおいしいですよ」
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四天王像で有名な東大寺戒壇堂のすぐ近くにあり、信楽焼の狸が目印。小さな木戸をくぐって中へ入ります
詳細情報
- そば処 喜多原(そばどころ きたはら)
- 住所
- 奈良市水門町50
- 電話
- 0742-22-0448
- 営業時間
- 11:00~16:00 ※売り切れ次第終了
- 定休日
- 火曜、第2水曜
- アクセス
- 近鉄奈良駅から徒歩約15分
- WEB
- http://www.soba-kitahara.com/
唯一!
伝統の奈良団扇を守り継ぐ老舗
池田含香堂(いけだがんこうどう)
私が当主を務める池田含香堂は、奈良団扇と奈良扇子のお店です。明治時代に2代目の栄三郎が透かし彫りの道具を発見し、それから奈良団扇の復興に努めたそうですが、今では製造しているのはうちの店だけになりました。今も1本1本手作りしています。透かし彫りの模様は奈良にゆかりのあるものが多く、その数100種類ほど。そのうち8割は栄三郎が作ったものですが、新しいデザインも毎年加えていっています。また奈良団扇は竹で作る骨数が60~100本もあるため、丈夫でよくしなり、あおぎやすいのも特長です。柔らかな風を一度体験すると、奈良団扇の美しさと機能性に驚いていただけるはずです!
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店奥で透かし彫りの「突き彫り」を行う池田さん
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染め上げた和紙を20枚重ね、小刀で一気に貫きながら型紙の模様を彫り進めます。台に使われているのは、硬さがちょうどよい朴(ほお)の木
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職人が使うのは自作の小刀。手前2本が池田さんのもので、他は父や祖父のもの。最近ようやく自分が使いやすいと納得できる1本を作ることができるようになったそう
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赤、黄、茶、白、水色の5色の和紙に、正倉院模様や奈良の風物の透かし彫りを施した奈良団扇。1本2,160円~
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驚くほど緻密な透かし彫りの団扇も。2017年に池田さんが3か月かけて作ったという作品
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創業160年の池田含香堂。三条通りに店を構えています
詳細情報
- 池田含香堂(いけだがんこうどう)
- 住所
- 奈良市角振町16
- 電話
- 0742-22-3690
- 営業時間
- 9:00~19:00
- 定休日
- 4月~8月は無休、9月~3月は月曜
- アクセス
- 近鉄奈良駅から徒歩約5分
- WEB
- https://www.narauchiwa.com/
※最新情報は各所へお問い合わせください