あられ酒 あられざけ

「あられ酒」とは、みりん酒の一種。
現代人にとって、みりんといえば“料理に使う調味料”というイメージがありますが、江戸時代の人々は薬用として、また高級な甘美酒として愛飲していたそうです。
ならまちの老舗酒蔵「春鹿醸造元(今西清兵衛商店)」社長の今西清隆さんによると、「みりんと焼酎を混ぜたものを、上方では『柳陰(やなぎかげ)』、江戸では『本直し』と呼び、井戸で冷やして暑気払いとして飲む習慣があった」そうです。
霰が降る様を模した「あられ酒」は、当時さぞかし目にも涼やかで人気だったのでしょう。
文人や通人にも好まれ、江戸時代中期の俳人・与謝蕪村は「炉開きや 雪中庵のあられ酒」と詠んでいます。

「あられ酒」の起源は諸説ありますが、いずれも奈良らしいエピソード。
一つは天平年間(729~749年)。奈良時代の女帝・孝謙天皇が春日大社にお参りした際、急に降り出した霰がお神酒に浮かび、その様子に感じ入ったところから着想を得たという説。
一つは慶長年間(1596~1615年)。江戸時代のならまちの漢方医・糸屋宗仙(いとやそうせん)が、猿沢池に降っては沈む霰の風情に興をそそられ、創案したという説。
昔の「あられ酒」は、かき餅またはもち米を薄く伸ばしてあられ状に切ったものを、焼酎に漬けては天日干しにすることを繰り返し、最後に上みりんと一緒に瓶に入れ、20日間ほど熟成させたものだったといいます。

そんなゆかしい歴史をもつ「あられ酒」を今も造っているのが「春鹿醸造元」。
明治17(1884)年の創業当時から「あられ酒」を製造し続けている酒蔵です。


春鹿醸造元の「あられ酒」は、精白もち米と精製酒精、麹(こうじ)を原料として本格的に醸造した甘味酒を使っているため、風味が爽やか。
うるちの麹菌を焼酎に漬けた「麹の花」を入れ、とろみのある甘い飲み口ながら、後を引かない上品さが特徴です。

「あられ酒」はそのまま“和製リキュール”として楽しめますが、暑い季節はよく冷やしてソーダや辛口の純米酒で割ると、よりすっきりとした飲み口に。
レモンを絞っていただくのもおすすめです。

「あられ酒」の瓶の形は、ひょうたんに詰めて売られていた往時にならったもので、初代は吹きガラス、次いで、溶かしたガラス原料を型に流し込んで作る「半人工ガラス」になり、今の瓶は3代目だとか。


レトロ感のあるパッケージと合わせ、風流な奈良みやげとして喜ばれる「あられ酒」。
その歴史あるエピソードとともに、奈良好きの心をつかむ、とっておきの一品です。
春鹿醸造元(今西清兵衛商店)(はるしかじょうぞうもと いまにしせいべいしょうてん)
- 住所
- 奈良市福智院町24-1
- 電話
- 0742-23-2255
- 営業時間
- 10:00~17:00(きき酒の受付は16:30まで)
- 定休日
- 1月~9月の第2・4火曜(祝日の場合は翌日)
- web
- https://www.harushika.com/
※価格は全て税込みです
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