今、大注目を集める
奈良のバーの魅力とは?
世界大会出場者を3人も輩出した奈良には、心惹かれるバーが勢ぞろい!どのお店も非常に魅力的で、奈良県産フルーツを使ったカクテルもあれば、凄腕バーテンダーが作る究極の1杯も。あなた好みのお店がきっと見つかります。
バー初心者でも安心
奈良はBARデビューに
おすすめ!
奈良のバーテンダーはやさしい人が多く、バー初心者でもあたたかく迎え入れてくれます。お酒があまり飲めないけれどバーの雰囲気を楽しみたいという方はノンアルやソフトドリンクでも大丈夫。快く対応してくれます。
奈良は清酒発祥の地
日本酒とバーの関係は?
新進気鋭の酒蔵とバーテンダーによるコラボが盛ん!大和橘を加えたクラフトジンや奈良産のボタニカルを入れたジャパニーズベルモットなどが誕生しており、それを使った絶品カクテルが味わえます。
奈良は氷室発祥の地
氷へのこだわりは?
奈良は自然の貯氷庫「氷室」発祥の地といわれており、
バーテンダーもお酒の味を左右する氷にこだわりを持っています。
奈良のバーの多くが「純氷」を使っていますが、
これは奈良のかき氷で使われているものと同じです。
LAMP BAR(ランプバー)
世界一のバーテンダーが生み出す、
トレンドカクテルを愉しむバー
「ワールドクラス2015」で優勝し世界1位に輝いた金子道人さんのオーセンティックバー。コロナ禍以前は年間数十回も海外を行き来し、世界の最新のバー事情に精通する金子さん。お店で出すカクテルも、世界のトレンドを取り入れた最先端のものや、海外で人気のカクテルに日本人のアイデンティティを組み合わせてアレンジしたものなど多彩。ランプをはじめ中世ヨーロッパのアンティーク調度品を配した重厚な店内で、最新のカクテルを。
オーナーバーテンダーの金子道人さん。和歌山、奈良の有名バーで修業後、2011年LAMP BARを開店。2015年に現在の場所に移転。「ワールドクラス2015」世界大会で1位に。以降、海外のバーでのレクチャーや審査員などで世界中を飛び回り、現地で感じたことを自身のスタイルで表現。奈良の地からトレンドを発信しています。
ビルの1階、扉を開くとその奥にもう1枚重厚な扉があり、異世界に迷い込んだような非日常の空間へといざなわれます。
メインルームの奥には「トランクルーム」と呼ばれるスピークイージー(隠し部屋)があります。
イチオシ情報
- 世界チャンピオンが作る最新でおしゃれな
カクテル。 - 奈良の酒蔵と共同開発した
ジャパニーズベルモットも! - カクテルの旅と進化を表現したストーリー性の
ある空間。
オススメの一杯
「ランプネグローニ」
1,650円
奈良産のゴボウとヒノキ、グレープフルーツの皮を漬け込んだカンパリ、日本のジン、ベルモットをプレミックスした金子さん流のネグローニ。炙ったヒノキと、土や草などのアーシーな香りが立ちます。
詳細情報
Bar Savant(バー サヴァン)
初めてでも心ほぐれる、ならまちの優しい隠れ家バー
町家をリノベーションしたならまちの隠れ家バー。木製の扉を開くと、中に茶室のようなにじり口があり、少し頭を下げて店内へ。「茶の湯の精神を取り入れています」とオーナーバーテンダーの田中達(たつし)さん。このにじり口が、日常から非日常へといざなう境界線の役目を果たしています。「和の精神とバーの融合」がBar Savantのコンセプト。坪庭が望める趣きある店内はやわらかな雰囲気で、初めて訪れる人も温かく迎え入れてくれます。
オーナーバーテンダーの田中達さん。奈良県生駒市の老舗バーで10年間修業したのち独立、2021年7月に生まれ育ったならまちに当店を開きました。白のバーコートはホテルや一部のバーテンダーだけが着用する正装。クラシカルな雰囲気によく似合います。
明治時代に建てられた築120年の町家を素敵にリノベーション。看板はなく、ならまちの一画にひっそりとたたずみます。
カクテルを作る田中さんの所作は凛として美しく、見とれてしまうほど。
イチオシ情報
- 町家を上質な空間に改装した居心地のいい店内。
- 奈良ではここしかない
「バー×坪庭」のコラボ! - 開店は14時。昼下がりに
お酒を楽しめます。
オススメの一杯
「朱恋(しゅれん)」
1,320円~
奈良県ブランドいちご・古都華(ことか)とあすかルビーを使って「大人の恋」を表現した一杯。いちごの甘みと酸味のバランスがよく、アルコール度の高い洗練された大人の味わい。
詳細情報
Bar Fiddich(バー フィディック)
フレッシュフルーツのカクテルが評判!気軽に立ち寄れるバー
ならまちの細い路地のビルの2階、入口に金額の書いたメニュー板があり、バー初心者も気負いなく入れるお店。季節の果物をたっぷり使ったフレッシュフルーツのカクテルがお店の代名詞です。秋冬はイモ・栗・カボチャなどの野菜も登場し、ホットカクテルの提供も。またカウンターにビールサーバーがあり、1週間ほどで銘柄が次々と入れ替わる2種類のクラフトビールも人気。地元に愛されるあたたかい雰囲気で安心感のあるバーです。
オーナーバーテンダーの藤井達也さん。奈良県内の有名バーで修業後、2011年3月ならまちに開店。全国のカクテルコンペでの金賞受賞経験やソムリエの資格を持ちます。「バー文化を知ってもらう入口になれたら」と間口を広げ、地元にも親しまれています。
猿沢池からほど近い観光に便利な立地。店名の「フィディック」は雄鹿の意味。奈良の鹿と、世界一飲まれているというシングルモルト「グレンフィディック」から名付けられました。
旬のフルーツを常時10種類ほど用意。フルーツのノンアルコールカクテルもオーダーできます。
イチオシ情報
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店内外にメニュー表があり、
バー初心者も安心! -
ソムリエのマスターが選ぶワインもあり、
お酒の種類が豊富。 -
見た目にも可愛いフレッシュフルーツの
カクテルが評判!
オススメの一杯
「まほろば」
1,210円
グレンフィディックをベースに抹茶リキュールとフレッシュなスダチ、青リンゴのシロップで若草山を表現。オレンジの皮で作ったガーニッシュの鹿が駆ける、奈良らしい一杯。
詳細情報
THE BAR(ザ バー)
世界中の旅人たちが集う、明治の趣きを残すホテルバー
関西の迎賓館と呼ばれる「奈良ホテル」のオールドファッションドバー。明治42(1909)年のホテル創業時からあり、館内で場所や形態を変えながら、110年以上の歴史を紡いできました。バックバーの上には、創業当時からのすりガラスがあり、奈良らしい風雅な装いが随所に。時代を経てきたからこそ生まれるあたたかみと気高さを感じながら、美酒に酔う贅沢な時間が堪能できます。
バーテンダーの林 祥央さん。奈良ホテル入社後、希望が叶いバーテンダーに。最近は若いお客様や初めてバーを訪れる人が増えているそうで、「緊張されている方にはこちらから話しかけるようにしています」とホテルマンらしい心配りも。
アインシュタインやオードリー・ヘップバーンなど世界の著名人が訪れる名門ホテル。宿泊せずバーのみの利用もできます。
現在の店内は2013年にリニューアル。以前はなかったカウンター席ができたことで1人でも入りやすくなりました。
イチオシ情報
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世界のVIPも利用した!?
奈良を代表するホテルバー - ホテルバーなので就寝前にも立ち寄れる。
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コーヒーやケーキなど
お酒以外の喫茶メニューもあります。
オススメの一杯
「マントルピース」
2,000円(サ込)
奈良ホテル創業100周年を記念したカクテル。ブランデーベースに赤ワイン、マラスキーノチェリーなどをシェイクし、ホテルを象徴するマントルピース(暖炉)の温もりを表現。
詳細情報
Bar ‘Pippin’(バー ピピン)
世界3位の実力を誇る、元ホテルバーテンダーの居心地いいバー
奈良ホテル THE BARの元ヘッドバーテンダー・宮﨑剛志さんが開いたオーセンティックバー。アンティークの棚を中央に据えたバックバーが印象的です。「バーは、場所と時間とおいしいお酒を提供する場」と、音楽や照明はもちろん、イスの座り心地や足の置き位置にまでこだわり、居心地のいい空間を生み出しています。宮﨑さんのカクテルは、アルコールの角が取れたやわらかな口当たりが特徴。実直に向き合い丁寧に作られる珠玉の一杯です。
オーナーバーテンダーの宮﨑剛志さん。奈良ホテル THE BARでヘッドバーテンダーとして活躍し、「ワールドクラス2013」で世界3位に。ホテル勤務で培ったさまざまな経験を生かし「最後はホテルバーに貢献したい」という夢も。
BGMに使用するレコードが600枚あり、古くは1950年代のものや、店名にもなっているミュージカル「Pippin」のサントラなど幅広い。常連客が持ってくることも多く、枚数が増え続けているそう。
近鉄新大宮駅から徒歩2分ほどの好立地にあります。
イチオシ情報
- シンプルな見た目の中に込められた
深い味わいのカクテル。 - シニアソムリエの資格を持ち
ワインも揃う。 - レコードのコレクションは600枚!
温もりのある音が心地いい。
オススメの一杯
「大和茶ジントニック」
1,200円
奈良県月ヶ瀬のティーファーム井ノ倉の最高級かぶせ煎茶・玉響(たまゆら)を使ったジントニック。24時間かけて茶葉の旨みを引き出した水出し茶にさらに生の茶葉をくぐらせ香りを立たせています。
詳細情報
THE SAILING BAR(ザ セイリング バー)
奈良を世界クラスに!凄腕マスターのオーセンティックバー
「ワールドクラス2010」で世界9位に輝いた渡邉匠さんがマスターを務めるバー。船内をイメージした店内は、「船に乗って世界各国を旅するように、世界各国のお酒を楽しむ」がコンセプト。U字型の大きなカウンターが据えられ、広いバックバーにはカテゴリーごとに約2,000本ものお酒が並びます。奈良初のクラフトジン「KIKKA GIN」の開発に携わるなど、奈良のバー界に新しい風を起こす渡邉さんのカクテルを求め、遠方からも多くの人が足を運びます。
マスターバーテンダーの渡邉 匠さん。「ワールドクラス2010」に奈良のバーテンダーとして初めて出場し世界9位に。その後の奈良のバーテンダーが活躍する道筋を作りました。バーテンダー歴30年の豊富な経験と知識を持ち、常に新しい試みに挑戦しています。
世界中のバーテンダーが愛読するカクテルレシピブック『THE JOY OF MIXOLOGY』に、渡邉さんがワールドクラス2010で披露したカクテル「Takumi’s Aviation」が掲載されています!
お店はお酒の神様を祀る大神神社からも近い。
イチオシ情報
- バーテンダーの愛読書に載る
至極のカクテル。 - お酒の種類が大充実!
レアなお酒とも出合える。 - シェフが作る本格的なコース料理も味わえる。
オススメの一杯
「KIKKA GINのジントニック」
1,500円
日本最古の柑橘とされる大和橘と、古来の生薬・大和当帰を使った奈良産ボタニカルのクラフトジン「KIKKA GIN」で作ったジントニック。和の香りが鼻に抜け、飲みやすく日本酒好きにも好まれる味。
詳細情報
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「ワールドクラス2010」世界大会にて第9位。奈良で初めて世界大会に出場したバーテンダー。シニアソムリエの資格を持つほか、油長酒造のクラフトジン「KIKKA GIN」のシニアアドバイザー。
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「ワールドクラス2013」世界大会にて第3位。奈良ホテルTHE BARの元ヘッドバーテンダーだったが2019年に独立し開業。シニアソムリエや唎酒師などの資格を持つほか、専門学校の講師も務める。
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「ワールドクラス2015」世界大会にて優勝。世界チャンピオンとなる。海外からの研修生を受け入れるなどバー文化の向上に力を注ぐほか、倉本酒造らとジャパニーズベルモットの開発にも取り組む。
3人が出場した
「ワールドクラス」とは?
世界各国の代表バーテンダーたちが競い合う世界最大級のバーテンダーコンペティションです。正式名称は「ディアジオ ワールドクラス」といい、2009年から始まりました。まずそれぞれの国や地域で予選大会が行われ、その優勝者1人だけが世界大会に進出できます。世界大会ではカクテルの味やスキル、創造性、ホスピタリティなどの面から総合審査され、最終的に世界チャンピオン1人が確定します。
2009年~2021年の間、世界大会に進
出した日本チャンピオンは12人います
が、そのうち3人が奈良のバーテンダ
ーでした。それが今回対談していただ
く渡邉さん、宮﨑さん、金子さんで
す。
奈良のバーならではの魅力とは?
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奈良は、町の規模の割合に比べてバーの数が多く、しかもどの店も平均点が非常に高いと思います。ユーティリティー性の高いバーが多いのも特徴ですね。カクテルもおいしいしウイスキーもおいしい。ワインもいけるしビールも置いている、みたいな。
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それと、ほっこりできるお店の空気感。奈良ホテルに25年勤めて感じたのは、特に関東の方は奈良に休みに来られているという印象。奈良は時間の流れもゆっくりだし、人ものんびり。そんな奈良の風土ならではのゆったりとした感じは、バーの接客や店の空気感にも自然と出ていて、休みに来られる人の感性に心地よく馴染むんじゃないかなと思います。
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奈良のバーは大都市のように1か所に集中するのではなく、それぞれの店が離れていて、点在しているのも大きな特徴ですね。だから御朱印めぐりやスタンプラリーをするみたいに、バーを何軒かはしごする「カクテルツーリズム」という楽しみ方もできます。
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奈良って本当に、その場所その場所に合った雰囲気でバーの個性を出している町だなと思います。それこそ町家や旧市街、駅近もあれば、繁華街やローカルもありますし。
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例えば奈良市内のバーをめぐった後に、ちょっと足を伸ばして桜井市のバーで締めくくるというのも楽しいと思います。それもタクシーでさっと行ってしまうのではなく、ローカルな単線の列車に揺られながら、無人駅を通過するのを眺めたりして、のんびり旅するのがおすすめ。
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ここ数年、「奈良=ワールドクラス」という知名度の高まりとともに、奈良に来るお客さんでバー好きな方が非常に増えてきました。皆さん、本当にカクテルがお好きで、その楽し気な雰囲気が店中にあふれているんです。来ていただいたら、きっとそれを感じてもらえる、奈良はそんな町だと思います。
バー初心者でも
奈良のバーは楽しめる?
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修学旅行で奈良に来たことがある方もいらっしゃると思いますが、奈良は旅人にやさしい町です。実際、奈良にはやさしいバーテンダーが多いです。他府県から来られて、「今日はお昼に飛鳥の方に行ってきました。岡寺行って長谷寺にも行ってきました」と楽しそうに目を細めるお客さんの来店に、僕らも喜びを感じているんです。気負いは要りません。うちは食事もお酒も両方楽しめますので、旅のついでに来ていただくのにちょうどいいと思います。
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奈良にはいろんなバーがあって、いろんなバーテンダーがいて、いろんなお酒づくりがあるので、「気に入ったお店に入って体験してみようかな」くらいの気持ちでいいと思います。1杯だけで何軒か回ってみるのもいいですし、何も高級レストランに行くわけではないのですから、どうぞ気軽に使ってください。お酒があまり得意ではない方にはソフトドリンクというのも一つの選択肢。僕はずっと奈良ホテルのティーラウンジもやっていたので紅茶もお出ししています。いろんな対応ができますよ。
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「いい音楽が聴きたい!お洒落な服を着たい!最先端のスイーツが食べたい!」。それと同じような温度感で大丈夫です。「今日は最先端のお洒落なカクテルをたしなみに行こう!」くらいのファッション感覚で来てください。またお酒はあまり飲めないけど、バーの雰囲気を楽しみたいという方もいらっしゃると思います。そんなときは遠慮なくノンアルコールを。僕らの仕事はただカクテルを作って出すだけじゃなくて、お客さんに心地いい時間や空間を総合プロデュースすること。ノンアルコールでも同じようにお洒落な感覚を楽しんでいただけると思います。
奈良は日本清酒発祥の地。
日本酒とのコラボも楽しめる?
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奈良のバー文化と日本酒文化はともにあります。奈良の酒蔵は今、30代から40代くらいの新進気鋭の経営者たちがこれまでになかった斬新な日本酒を生み出し、全国的に注目されています。彼らはとてもフレキシブルで、「バーでも日本酒を楽しんでいただけるように」というスタンス。僕らもその思いを受け止め、日本酒を使ったコラボを一緒に考えたりしています。
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僕は唎酒師(ききさけし)の資格を持っていて、ホテル時代から日本酒のカクテルをたくさん出してきました。うちでは今、地酒はもちろん、お茶や生薬など、奈良の地の物を使ったカクテルを作っています。ほかにも奈良市観光協会が展開する日本酒ハイボール「奈良しゅわボール」のレシピの原案を考案しました。ウイスキーの代わりに奈良の地酒を使ったカクテルで、さわやかな飲み心地が楽しめますよ。
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倉本酒造の倉本隆司さんやシンガポール在住のバーテンダーと一緒にベルモットの開発をしました。ベルモットとは、白ワインをベースにハーブなどを配合して造るフレーバードワインのことで、カクテルではよくマティーニに使われています。そのベルモットを白ワインではなく、倉本酒造の日本酒をベースにして造ったのが「一水氷室(いっすいひむろ)」で、LAMP BARではそれを使ったオリジナルカクテル「一水氷室のマティーニ」をお出ししています。奈良のアーシーな香りが口の中でふわっと広がる絶妙な味わいを楽しんでいただけたらと思います。
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「風の森」で知られる油長酒造が創業300周年を記念して「KIKKA GIN(キッカジン)」を造ることになり、僕はシニアアドバイザーとしてそのお手伝いをしました。「KIKKA GIN」は大和橘や大和当帰など奈良産のボタニカルを使って蒸留するクラフトジンです。THE SAILING BARでは「KIKKA GINのジントニック」をお出ししているのですが、きっと日本酒好きの方にも満足いただける1杯だと思います。僕は今、この「KIKKA GIN」と「一水氷室」を使えば、奈良由来100%のカクテル「奈良マティーニ」ができるんじゃないかなと考えていて。そんな1杯が、ほかでもない日本清酒発祥の地・奈良から誕生するなんて、最高だと思いませんか。
奈良は氷室発祥の地。
お酒の味を左右する氷へのこだわりは?
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氷といえば、奈良には氷の神様をまつる氷室神社があります。奈良と氷のつながりは古く、奈良時代の上級貴族・長屋王(ながやおう)は、お酒に氷をひたして飲んでいたそうです。今でいう“オンザロック”ですね。その氷ですが、冬の間にできた天然の氷を「氷室(ひむろ)」という施設にしまっておいて、夏になったら取り出して使うという貴重品でした。おそらく取り扱いにも注意が必要だったでしょう。僕たちバーテンダーも同じ。氷しだいでお酒の味が変わるので、その扱いには気を配っています。
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うちで使っている氷は、氷室神社に奉納されているものと同じ純氷(じゅんぴょう)です。冷やす時間が長いため、通常よりも固くて溶けにくいのが特徴。それをいったん-20℃の冷凍庫に保管しておいて、使う直前に-5℃~0℃くらいの冷凍庫に移し替えるようにしています。氷の締まりを少し緩めるのは、氷から溶け出す成分によって、お酒が一番おいしくなる状態にもっていくため。また、冷えすぎていると氷が割れてしまい見映えも悪くなるからです。
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うちも金子さんと一緒で、奈良の製氷会社の純氷です。通常48時間かけて90%の純度があるものを純氷というけれど、こちらではさらに丸1日長く、72時間もかけて作っているんですよね。ちなみに僕は、氷の温度を上げる作業をお客さんの前でしています。-20℃の冷凍庫から取り出した氷を、カクテルによって緩むまでステアしたり、お酒を垂らして時間を置いたりして、ちょっとずつ温度を上げています。見てもらうのも一つのプロセスかなと。
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僕はプラス、“魅せる”氷です。例えばバラ型のカップに、食用バラの乾燥パウダーを溶かしてバラの氷を作ったり、アイススタンプで溝を作って、そこにデキストリンというとろみをつけたブルーキュラソをフロートすることで「KIKKA GIN」のマークを浮かび上がらせたり。視覚的な美しさや、氷がもっている可能性もプレゼンしたいなと思っています。日本人の繊細な手技から生み出される氷の演出は、海外の人にとってまさにジャパンプレミアムですからね。
進化し続ける奈良のバー文化
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大阪の専門学校で毎週お酒の講義を行っていて、もう8年になります。年間70~80人の生徒たちに、お酒のことはもちろん、食と飲み物のロジカルな関係や五感をフル活用することなどを話しています。「自分で納得できる物を作って、お客さんに売って、それを稼ぎとする」。そんな志をもつ若い人たちに“技術屋”としての心構えなどを教えています。
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うちでバーテンダーとして働いている子たちには「なるべく大会に出るように」と言ってます。大会を通して業界の大先輩方にジャッジされることで、バーテンディングやカクテルメイキングの技術が格段に向上しますからね。若手バーテンダーも続々と育ってきているので、奈良のバーはこれからますますおもしろくなりますよ。
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後進の育成という点では、うちのスタッフに年1回、海外に行ってもらい、僕の知り合いのバーで働くという体験を行っています。海外の考え方やトレンドに触れ、それをお店の仕事に生かしてもらえたらと思って。また世界中から研修生を受け入れていて、そのためのマンションも借りています。その研修生が母国に帰った際、奈良やLAMP BARのことを話してくれたら嬉しいですし、またそうやって奈良のバー文化を世界に広めてくれるんじゃないかなと。
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実はLAMP BARには、知る人ぞ知る別の顔があって。それは「日本チャンピオンが世界大会前に必ず訪れるトレーニング場」だということです。金子さんが世界チャンピオンになった頃から、歴代の日本チャンピオンたちは全員ここに来てるんですよ。LAMP BARのカウンターを借りて、僕たちからトレーニングを受けるために。
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世界大会に出る前に、その出来具合を僕らでチェックするのが伝統になっているんです。渡邉さんも宮﨑さんも僕も、世界トップレベルの視点で厳しくジャッジし、アドバイスしています。そんな、お酒のおいしさをとことん見極めようとする風土も含めて、奈良は日本のバー文化の最前線にあるといってもいいでしょう。
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そうやって奈良から世界へと送り出したバーテンダーたちは、「世界が今求めている旬の味」を持ち帰ってくれるんですよ。それを新しいカクテル開発に生かすことで、僕たちのお店も日々アップデートしています。訪れるたび、新鮮な驚きや感動が味わえる。そんな至高の1杯を期待して、奈良のバーにお越しください。