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拝殿 はいでん
寛文4年(1664)、徳川家綱により再建された拝殿。唐破風(からはふ)の大きな向拝を持つ豪壮な社殿建築です。拝殿の奥は禁足地で普段は神職者も入ることのできない神聖な場所。拝殿と禁足地の間には結界として「三ツ鳥居(みつとりい)」が設けられています。鳥居を三つ横一列に組み合わせ、中央の扉に御扉(みとびら)を設ける珍しい形で、拝殿とともに国の重要文化財です。
日本最古の神社は、奈良にありました。
「大いなる神の神社」と書いて、大神(おおみわ)神社。日本に8万社以上あるといわれる神社の中で、日本最古と謳われています。
大神神社が日本最古といわれる理由のひとつが、古代から続く神祀りの形。
神社のお参りというと、拝殿に立って、その奥にある本殿に向かってお祈りするのが一般的ですが、大神神社は違います。本殿がありません。
なぜなら、拝殿の奥にそびえる三輪山(みわやま)こそ、神様が鎮まるご神体だからです。拝殿から直接、神の山に祈りを捧げるという原初の神祀りが、大神神社には残っています。
ご祭神は、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)。
『古事記』や『日本書紀』に登場する国造りの神様で、「大いなる物の主」の名のごとく、精霊を含むすべての「もの」を司るといいます。
世の中の幸福を押し広める守護神として崇められ、そのご神徳は産業の発展から縁結びまで、あらゆるものに及びます。
緑の大木に囲まれた参道は、すでに神域への入り口。境内は厳かな空気に満ち、特別な場所であることが肌を通して伝わってくるよう。
拝殿が建つのは、人が入ることを許された三輪山の麓。拝殿の奥には、ご神体との結界として「三ツ鳥居(みつとりい)」と呼ばれる独特の鳥居が設けられています。
拝殿の前に立ち、居住まいをただして二礼二拍手一礼を。二礼の後、顔をあげて背筋を伸ばし、三ツ鳥居のその先、神様が鎮まる場所にまでこの音が届きますようにと、拍手(かしわで)を力強く二つ。
最後に、こうして今日お参りできた喜びや、霊験あらたかな神様とのご縁を胸に刻みながら、深く一礼。
これまで、どれだけの人々がここで祈りを捧げてきたことでしょう。
古来、あまたの思いを受け止め包み込んできた、大きな神の山に向かって手を合わせると、不思議なくらい静かな気持ちに。それはまるで、忙しい毎日に揺れていた私のココロの重心が、ぴたっと定まるようなすがすがしいひととき。
はるか古代に始まり、今も変わらず在り続ける日本最古の神社へ。ココロが凛とする別格の聖地へと出かけましょう。
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寛文4年(1664)、徳川家綱により再建された拝殿。唐破風(からはふ)の大きな向拝を持つ豪壮な社殿建築です。拝殿の奥は禁足地で普段は神職者も入ることのできない神聖な場所。拝殿と禁足地の間には結界として「三ツ鳥居(みつとりい)」が設けられています。鳥居を三つ横一列に組み合わせ、中央の扉に御扉(みとびら)を設ける珍しい形で、拝殿とともに国の重要文化財です。
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拝殿の前の授与所には、お神符(しんぷ)やお守り、御朱印帳など数々の授与品があります。特にお守りの種類が多く、大神神社と縁が深い白うさぎがハートの付いた破魔矢を持った「縁結守」や、巳(み)さんをモチーフにした「みまもり」、三輪山内から出土した勾玉(まがたま)にちなんだお守りなど多彩に揃います。
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ご祭神の大物主大神(おおものぬしのおおかみ)は酒の神としても崇められています。大物主大神が蛇に姿を変えて現れた神話から、大神神社では蛇を「巳(み)さん」と親しみを込めて呼びます。拝殿の前の大杉は、大物主大神の化身とされる白蛇が棲むことから「巳の神杉」と呼ばれ、「巳さん」の好物の卵と日本酒が参拝者によってお供えされています。
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酒造りの名人、杜氏の祖神・高橋活日命(たかはしいくひのみこと)を祀る摂社。一夜にして美酒を醸したとされる高橋活日命は、崇神(すじん)天皇に命じられて三輪の神様である大物主大神に捧げる神酒を造った掌酒(さかびと)と『日本書紀』に記されています。本社とともに酒造関係者からの篤い信仰を集めています。
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大物主大神の荒魂(あらみたま)をお祀りする摂社。力強い神威があるとされ、病気平癒の神様として信仰を集めています。狭井とは神聖な泉のことを言ったと思われ、「薬井戸」から湧き出る薬水を汲みに多くの人が訪れます。清々しい境内には檜皮葺入母屋造(ひわだぶきいりもやづくり)の拝殿、春日造りの本殿が鎮座。大神神社のご神体・三輪山の登拝口が設けられています。登拝の際は、厳守事項を守り神聖な気持ちで。
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狭井神社の鎮女池(しずめいけ)にある摂社。檜皮葺(ひわだぶき)の屋根、鮮やかな朱塗りの春日造りの祠に、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)がお祀りされています。市杵島姫命は天照大御神が生んだ宗像三女神の一柱。海の神、水の神であり、神仏習合を経てからは芸能・福徳財宝を司る弁天さんとしても親しまれています。
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大和三山が見渡せる三輪山の麓に鎮座する摂社。学業向上・受験合格にご利益があり、全国からお詣りする人が絶えません。ご祭神の久延毘古命(くえびこのみこと)は知恵の神様ですが、その正体は案山子(かかし)とされ、歩いて行くことはできないが世の中のことをことごとく知っている神として、『古事記』に記されています。知恵の象徴とされるフクロウの絵馬も人気です。
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広い境内の一角に設けられた展望台。ここに立つと大神神社のご神体・三輪山のお姿と、三輪山を背にした眼下に広がる奈良盆地を見渡すことができます。畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)、香具山(かぐやま)の大和三山が浮かび、西の端には二上山(にじょうざん)のふたこぶのシルエット。ソメイヨシノや枝垂れ桜が華やかに咲き誇る春は絶好のお花見スポットに。