東大寺

東大寺境内スポット7選

大仏さま、だけじゃない。
国宝のお堂に仏像、フォトジェニックな絶景との出会いも、次々と。
1300年をめぐり歩く 東大寺 境内スポット7選 番外篇あり!

天平文化が語りかけ、鎌倉時代の叡智が微笑み、江戸時代のセンスが光る。
1300年の時が息づく、東大寺の広大な境内は、
さまざまな時代の扉が開く、時空のワンダーランドです。
東大寺を訪れる際には見逃せないスポット7選に、
かわいい番外篇を加えてご紹介!
現地へお出かけの際は、本記事のPDF版をプリントアウトもしくは
タブレットなど携帯端末に入れて、旅のお供にしてくださいね。

1

前後、左右、真上も忘れずしっかり見たい、実は見どころづくしの巨大国宝。 南大門

 まずは参道で立ち止まり、高さ約25mの全体像をじっくり観察。一見、二階建てのように見えますが、門の中に入って真上を見上げると、一層構造の吹き抜けだということがわかります。キーワードは「大仏様(だいぶつよう)」。奈良時代に創建された南大門は、平安時代に暴風で倒壊したといわれています。そして鎌倉時代、南大門の復興にあたった重源上人(ちょうげんしょうにん)が当時最先端だった宋(中国)の建築方法「大仏様」を導入し、貫(ぬき)と呼ばれる横木を多用するなど、倒壊しづらく、豪壮雄大な現在の姿を作り上げました。門の左右には運慶を筆頭にそれぞれ約12人の仏師が手がけた巨大な金剛力士像がそびえ立ち、門の後方左右では石獅子が守護にあたるーー。東大寺を守り抜こうと人々が南大門に込めた気概が感じられます。

  • 東大寺の正門、南大門。堂々たる威容の向こうに、中門、大仏殿が一直線に並んでいるのがわかります。

  • 仁王像とも呼ばれる、金剛力士像。巻き起こる風さえ感じられるような迫力。運慶、快慶、定覚、湛慶ら仏師の手により69日間で彫り上げられました。

  • 下から見上げるとよくわかる、吹き抜けの構造。約18mもの高い柱に貫を何段も組み合わせています。

  • 宋から来日した石工の手によるもので、日本最古の石獅子(狛犬)といわれています。異国風の巻き毛や台座にまで施された装飾が麗しい。南大門をくぐり、金剛力士立像それぞれの裏側にあります。

2

ボブ・ディラン、ボン・ジョヴィら世界的ミュージシャンも演奏を奉納。大仏さまが座す、世界最大級の木造建築。 大仏殿(金堂)

 お目にかかるたびその大きさに驚かされる、高さ約15mもの大仏さま。正式名は盧舎那仏(るしゃなぶつ)といい、サンスクリット名ではバイローチャナ、「あまねく照らす」という意味があるそうです。大仏殿は、平安時代末期と戦国時代に兵火でニ度焼失、現在の建物は江戸時代に再建され、横幅は創建時に比べ約3分の2に縮小しましたが、現存する木造建築では世界最大級の規模。南大門と同じ大仏様(だいぶつよう)がとりいれられた様式で、堂内を見上げると、その構造美をうかがうことができます。また再建時に、高い柱に使う大型木材が不足したため、円柱の芯木の周りに周辺材を打ち付ける集成材方式を採用。時代の智慧がここにも息づいています。

  • 大仏殿の前庭では、1994年にUNESCO(国際連合教育科学文化機関)の呼びかけで、文化財保護を訴えるコンサートが開催。ボブ・ディランやボン・ジョヴィなど、海外と日本のミュージシャンが出演しました。

  • 天平15年(743)、聖武天皇の発願によりはじまった大仏造立。天平勝宝4年(752)には、大仏開眼供養会(だいぶつかいげんくようえ)が盛大に催されました。

  • 大仏殿前にある国宝・金銅八角燈籠。大仏開眼供養会にあわせて造立されたと考えられ、1300年近く、この場所で東大寺の歴史を見つめています。聖武天皇も同じ場所でこの金銅八角燈籠を見ていたことでしょう。

  • 殿内の柱に不思議な穴が!この穴をくぐると頭がよくなる、無病息災のご利益があるなどの言い伝えがあります。※コロナ感染症拡大防止により、現在は期間未定で封鎖しています。

3

四天王の魅力極まる!力に満ちた表情をゆっくりと。 戒壇堂

 もとは法華堂にあったのでは、とも考えられている四天王像は、貴重な天平彫刻。活き活きとした表情と力強く滑らかな造形が、参拝する者の心を惹きつけます。天平勝宝6年(754)、聖武太上天皇と光明皇太后は大仏殿の前に設けられた臨時の戒壇で、唐から来日した鑑真により戒を授かりました(戒を受けることで正式な僧尼として認められます)。翌年、その臨時の戒壇の土を移して、現在のこの場所に、日本初の正式な授戒の場・戒壇院が建立されたのです。境内の西端にあるせいか「ここまでは来られる方は少ないんですよ」と東大寺の方が教えてくださりました。※戒壇堂は令和2年7月1日より保存修理等のため約3年間拝観受付を停止しております。その間、四天王立像は「東大寺ミュージアム」に安置しています。

  • 何度も火災で焼失し、現在の戒壇堂は享保17年(1732)の再建。

  • 建立当初は金堂・講堂・僧房・軒廊などさまざまな建物もあったそうですが、いまは戒壇堂などが残るのみです。

  • 仏法の守護神・四天王。わが国では奈良時代に四天王への信仰が最高潮に達しました。甲冑は中央アジアの様式で文化の広がりが感じられますね。

4

貴重な仏像の数々をお堂では見ることのできない角度からもじっくり。 東大寺ミュージアム

 南大門と中門を結ぶ参道脇にある、2011年に開館したミュージアム。東大寺諸堂に安置されていた貴重な仏像を最良の環境で保存・展示していて、寄らずに過ごすにはもったいないスポットなのです。例えば、国宝の誕生釈迦仏立像を360度すべての角度から拝観して、ふっくらと穏やかなその姿形に心和ませたり、三昧堂(四月堂)に安置されていた千手観音菩薩立像の脇侍に法華堂の日光・月光菩薩立像を据えた、ミュージアム独自の配置に展示の域を超えた神聖なものを感じて、思わず手を合わせたり。祈りと時代ごとの美が尽くされた歴史を間近に体験できます。

  • 入口横には大仏さまの「手」の実物大レプリカが。そばで見ると、ほんとに大きい!

  • 一体一体の仏像と対話するように間近でゆったり拝観できるのが大きな魅力。細部にまで宿る美しさを味わいながら、いくつもの発見を楽しみたい。

  • 約1300年前の大仏開眼供養会で祀られたと考えられている誕生釈迦仏立像(右)。
    自分も“その場”に居合わせている気持ちで、ぐるり360度、どの角度からも拝観できます。足元の灌仏盤(かんぶつばん)もともに国宝です。

  • ミュージアムに併設された茶廊・葉風泰夢でひと息。抹茶と「青蓮」(2個)のセット は1,100 円。ここでしか食べられない青蓮は、蓮根を使ったみずみずしい皮が美味。

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毎夜8時。古からの大鐘の音が低く豊かに、奈良のまちに響き渡る。 鐘楼

 「奈良太郎」の名を持つ大鐘(おおがね)は奈良時代。大鳥が羽ばたくような形の鐘楼は、鎌倉時代。異なる時代に生まれたものがひとつになり、新たな時を重ねているのはいかにも東大寺らしい光景。鐘楼ヶ丘とも呼ばれるこの場所は、室町時代にはじまる「南都八景」にも選ばれた名勝です。重量約26tの大鐘は、鎌倉時代に剛力で知られた武将・朝比奈三郎義秀が撞くと三日三晩も鳴り止まなかったとか。そのせいか東大寺では、一般に撞木(しゅもく)で鐘を撞くポイントとされる撞座(どうざ)よりも下の位置を撞くようになりました。大晦日には一般の方も参加して除夜の鐘が撞き鳴らされます。

  • 正岡子規の有名な句「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」。子規が実際に柿を食べながら耳にしたのは、東大寺の大鐘の音だったとか。

  • 普通の鐘が撞座(丸く浮き彫りにされた部分)を撞くのに対して、東大寺の大鐘はそれより下の位置を撞きます。

番外篇

にゃんと!くるりんぱ。ここで転ぶと、“猫”になってしまう? 猫段

 大仏殿の東側斜面を鐘楼へと向かう途中、ゆるやかな石段に差しかかったら少々ご注意を。この階段で転ぶと来世は猫に生まれかわると伝わる石段、その名も猫段です。凹凸があり、階段の蹴り上げのリズムも独特なので、こういったお話で足元の注意を促したのでしょうか。いくつも時代がめぐり、この頃では、わざと転んでみる猫好きさんもいるようですよ。

6

「仏さまの世界」に招き入れられたよう。国宝の仏像が立ち並ぶ濃密な空間。 法華堂(三月堂)

 足を踏み入れた途端に圧倒される、聖なる気配。秘仏の執金剛神像(しゅこんごうしんぞう)を含めると堂内の仏像は全10体。全て奈良時代のもので国宝です。天平彫刻を代表する傑作として名高い本尊・不空羂索観音菩薩像(ふくうけんさくかんのんぼさつぞう)は、古代インドの狩猟具である「羂索」という縄を持ち、もれなく人を救う観音だそうです。頭上の宝冠は細やかな銀細工が素晴らしく、翡翠・琥珀・水晶・真珠・ガラスなど数多の宝玉が煌びやかに飾り付けられています。これらは聖武天皇と光明皇后が幼くして失くした我が子の弔いに飾ったものとも伝わっており、美しさの中に悲しみも浮かび上がってくるようです。

  • 法華堂は『東大寺要録』によると、奈良時代の天平5年(733)に創建されたと伝わります。現存する東大寺伽藍の中では最古の建物。

  • よく見ると、瓦の色が左右で異なり、異なった様式の建物が巧みに融合しているのがわかります。建物の中ほどから左側が奈良時代創建の正堂で、右側が鎌倉時代に増築した礼堂です。

  • “座って”拝観できるスペースもあり、時が経つのを忘れ、長時間を過ごす人も多くいるようです。

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抜群の眺望スポット!朝昼晩それぞれの眺めを24時間楽しめる。 二月堂

 奈良のまちを見渡す雄大な眺望が満喫できる、二月堂。生駒山に沈む夕日も、夜に灯される釣燈籠も、早朝の清々しい景色も、どれも心に沁み入る美しさで、人気の撮影スポットです。また、二月堂の名前の由来でもある毎年旧暦の二月に行われる修二会(お水取り)は、天平勝宝4年(752)の創始から1度も途切れず行われている「不退の行法」です。二月堂は南北両側に階段があり、北側の階段は修二会でお松明(たいまつ)を持った童子が練行衆を先導して進む登廊(のぼりろう)となっています。昇り降りそれぞれで眺めの違いを楽しむのもいいですね。

  • 寺院の多くは南向きに建てられますが、二月堂はなぜか西向き。一説には平城宮を見守るためだったのでは、といわれています。

  • 大仏殿の北側から二月堂へと向かう、二月堂裏参道。古瓦の埋まる土塀の風情がなんともフォトジェニック。

  • 美しく燃え上がる炎と舞い散る火の粉、奈良に春の訪れを告げる修二会の一幕。お松明の燃え残りを持ち帰り、お守りにする人も多いそうです。

いくつもの時代の輝きを境内にちりばめながらも、
1300年変わらない東大寺。
その魅力を深く知ると、あなたの何かが変わりはじめるかもしれません。