円成寺

若き運慶の才気がほとばしる、国宝・大日如来坐像 若き運慶の才気がほとばしる、国宝・大日如来坐像

  • 新たな才能の開花を告げる記念碑的像 新たな才能の開花を告げる記念碑的像

     「後白河法皇が仏工運慶に仰せて金剛界の大日如来を造らしめ、当山に安置し、或は仏舎利に多宝の金塔を寄附せさせましまける」、円成寺『寺縁起』の一文です。
     相應殿(そうおうでん)の大日如来坐像は、台座に記された墨書銘(ぼくしょめい)から、天才仏師・運慶が20歳代で、造像したことが推定されています。その表現には平安後期の主流であった定朝様に学んだ形跡が散見されるものの、若々しく張りのある面相や生気に満ちた肉身が、傑出した才能の登場を告げています。鎌倉時代の勇ましく、活き活きとした空気を背景にやがて“写実の時代”と呼ばれる彫刻表現を牽引する運慶。現存作品の中では最初期のものであり、実質的なデビュー作といえる、端正で美しい大日如来坐像です。

  • 細部への徹底したこだわりが新風を生む 細部への徹底したこだわりが新風を生む

     運慶は、後に東大寺南大門の仁王像を制作したとき、完成した像に対し、顔の向きと肩の肉付きの大掛かりな調整を行なったことが現代の調査で判明しています。一度完成した像でも、気に入らなければ納得いくまで改良する。運慶の彫刻表現の根本には、細部までの徹底したこだわりがあるといえるでしょう。
     例えば、像の側面から上体を見るとわずかな反りがあることがわかりますが、実はその絶妙なバランスこそが全体の颯爽とした緊張感を造り上げています。納得のいくまで時間をかけ、取り組んだ意欲作だからこそ、円成寺の大日如来坐像は、新たな表現世界の到来を人々により強く予感させるのかもしれません。

  • 「相應殿(そうおうでん)」への遷座で、より間近に拝観 「相應殿(そうおうでん)」への遷座で、より間近に拝観
    平成の大日如来坐像
    平成の大日如来坐像

     2017年12月から、大日如来坐像が安置されているお堂が、これまでの多宝塔から相應殿に変わりました。これにより、従来よりも間近にお参りができるようになり、さらに正面だけではなく両側面からの姿もご覧いただけるようになりました。大日如来坐像の上体を反らすことで颯爽とした新時代の姿を造り上げた運慶の技をぜひ、じっくりとお確かめください。大日如来坐像を取り巻くように配置された四天王立像は東京藝術大学による復刻で、現代の優れた技も併せてご覧いただけます。
    また、現在多宝塔には大日如来坐像の模刻「平成の大日如来坐像」が安置されています。

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