身支度を整え、朝日清々しい
本殿へあがります。
御巫の一日のスタートです。
春日大社
- 宮司が語る式年造替
- 御巫の、とある一日
御巫の、とある一日
掃除
何よりも大切とされる境内の清浄。社殿のお清めや参道の掃除を神職、御巫全員で、毎日欠かさず行います。
御巫さんインタビュー その1
御巫(みかんこ)になるために、資格や特別な技能や知識は必要なのでしょうか?
御巫になるには特別な資格などは必要ありません。私の場合、大学で春日大社の話を聞いた時「これだ!」と思い、神社へ面接へ行きました。それまで、学生時代に御巫の経験があった訳でもないですし、神社でお手伝いをしたこともありませんので、特別な技術や知識は必要ありません。
参拝準備
清掃と平行して、授与所の支度や看板設置など粛々と参拝者をお迎えする準備が進められます。
この時間が一番慌ただしいのかもしれません。
御巫さんインタビュー その2
春日大社ならではの特別な装束などありますか?
この赤白がきれいな「八枚襟」ですね。10月から5月は、本来の正装である「八枚襟」で過ごします。ただ、6月から9月の夏場は暑くなってしまうので、「二枚襟」になります。あとは、神社の社紋にも使われている藤の花に由来する「藤のかんざし」です。これは365日、必ず付けています。
私生活でも特別な規則などありますか?
前髪が切れないことですね。「鬢(びん)出し」と言って、平安時代の人がしていたような、前髪を全部使って耳の横まで髪の毛がくるように「鬢」を出す髪型があります。大きなお祭りの際は、その「鬢出し」にする必要があるので、奉職が決まった時点から「前髪は切らないで下さいね」って言われます。後ろ髪は特に腰まで長くないとダメということはないのですが、括れるくらいの長さは必要だと思います。
ぞくぞくと訪れる参拝者に対応します。
「ようこそお参りくださいました」の心を込めて。
祭典用の装束を着装して、神事「旬祭(しゅんさい)」が執り行われる本殿(※)へ。
※現在は、式年造替のため「移殿(うつしどの)」
旬祭とは、平安時代後期に始まった神事で、毎月1日、11日、21日に催され、21日のみ一般の参列が可能です。
旬祭にて神楽奉納
紅白の八枚襟に上衣、緋袴(ひばかま)姿の御巫が扇と鈴を手に静かに舞います。
御巫さんインタビュー その3
神楽(かぐら)について教えてください。
神楽とは神様に奉納するための歌や舞のことです。春日大社の神楽は「社伝神楽」といわれ、8人の御巫による八乙女舞(やおとめまい)を基としたものです。平安時代初期から伝る独特な古式を残しているため、稽古で型を覚えるのが大変です。
昼食
慌ただしく時は過ぎ、ホッとひと息。
春日大社では奉職者専用の食堂で食事をいただきます。
参拝者案内
特別参拝(※)を申し込まれた方に、境内を案内して回ります。
御巫が直接案内するのは、春日大社ならではの奉仕です。
御祈祷受付、御朱印やお守りの授与、それから・・・。
御巫さんインタビュー その4
御巫になって良かったと思うことはありますか?
御巫は未婚の女性しか許されませんので、今しか出来ないことをやっている!という思いがあります。今年で4年目になりますが、奉職(在職)の間に最上位の御巫しか伝授が許されない神楽の稽古を受けて、様々な神事でご奉仕させていただくのが目標です。それが強いモチベーションになっています。
片付けを済ませ拝礼。
こうして、1日のお勤めが終わります。
あとがき
御巫さんの1日はいかがでしたか?
神職とともに神様に仕えている女性は「巫女(みこ)」と呼ぶ場合が多いですが、
春日大社では古くから「御巫(みかんこ)」と呼ばれているそうです。
私たちと神様を繋いでくれる御巫さんは、参拝者の対応だけでなく神楽の稽古や
御祈祷の奉仕など多岐に渡り、毎日忙しくされています。
春日大社では、美しい藤の花とともに御巫さんにも注目してください。
※この記事は2016年に取材を行いました。
※春日大社では「御巫修行」の体験もできます。詳細は春日大社ホームページまで。