鑑真和上の想いを引き継ぐ、
三体の仏さま
南大門をくぐり、正面に見える金堂には、三体の仏さまが安置されています。中央に高さ3mに及ぶ本尊・盧舎那仏坐像(るしゃなぶつざぞう)、向かって右に重厚感のある薬師如来立像、左に953本の腕を持ち高さ5mを超える千手観音菩薩立像。そのお姿、大きさは圧巻です。
唐招提寺は、奈良時代の天平宝字3年(759)、唐の高僧・鑑真和上によって建てられたお寺です。鑑真和上は、日本に仏教の戒律を伝えるため、苦難の末に来日し、東大寺の戒壇で聖武太上天皇をはじめ四百余人に、日本で初めて正式な授戒をしました。東大寺で5年過ごしたのち、下賜された新田部(にたべ)親王の旧邸宅跡に、戒律を学ぶための修行道場を開いたのが、唐招提寺の始まりです。
当初は、講堂や経蔵、宝蔵などがあるだけでしたが、鑑真和上が亡くなった後の8世紀後半、弟子の如宝(にょほう)の尽力により、金堂(国宝)が建立されました。
壮大な美を備える天平様式の金堂に、三体の仏さまが並ぶ様子は圧倒的な迫力ながら、安堵感に包まれ、鑑真和上の想いを受け継ぐ弟子たちの祈りの心が伝わってくるようです。
墓所につづく参道の
美しい苔庭も必見
境内の北東の奥まった場所に、鑑真和上の墓所である開山御廟があります。奈良のお寺の境内に高僧の墓があるのは珍しく、1250年もの長い間、多くの人々が参拝に訪れています。御廟の前には、鑑真和上の故郷・中国の揚州(ようしゅう)から贈られた瓊花(けいか)が植えられており、初夏になると白く可憐な花を咲かせます。
御廟にいたる参道の両側には、唐招提寺の魅力の一つである、鮮やかな苔庭が広がります。一年を通して瑞々しい緑の絨毯(じゅうたん)が辺りを覆い、大きな杉の木の間から光が差し込むと、より幻想的で美しさが増します。
鑑真和上に会いに
目を閉じ、穏やかに瞑想する姿が刻まれた鑑真和上坐像(国宝)。弟子の忍基(にんき)が、和上の死期を悟って造ったとされる、日本最古の肖像彫刻です。御影堂(みえいどう)(重要文化財)に安置されており、毎年、和上の命日である6月6日とその前後(6月5日・7日)の3日間のみ特別公開されています。
年に数日しか公開されないことから、平成25年(2013)に鑑真和上坐像を模した御身代わり像(おみがわりぞう)が造られ、いつでも参拝できるように。御身代わり像は、奈良時代の脱活乾漆(だっかつかんしつ)技法を用いて忠実に模造され、開山堂に安置されています。
※法要等により通常と異なる実施となる可能性があります。お出かけ前に唐招提寺公式サイトでご確認ください。